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きれいな風景に感動することだけが感受性があるということなのだろうか。

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せんだって、あるところで感受性の話題になった。

きれいな夕焼けを見て涙するひとは感受性があるが、せっかく感動しているそばで「はやくメシ行こうぜ」などと言ってしまう人は感受性にとぼしいということだった。

私もどちらかというと「はやくメシ行こうぜ」派だ。
いや、「メシ」くらいだったら私も夕焼けを見ているかもしれないけど。
その「メシ」をほかのだれかと約束していて、夕焼けを見ていたらそのひとをひとりで待ちぼうけにさせてしまう場合とか。
夕焼けなんか見ていないで今すぐにここを離れないと飛行機に遅れるとか。
そんなときは、夕焼けなんか見ても感動しないだろう。夕焼け以外のことで頭がいっぱいになってしまう。
私にとっては夕焼けよりも、ひとを待たせないことや飛行機に遅れないことのほうが大事なのだ。

ところで感受性、感受性と気軽に言うけれど、感受性とはどういう意味なんだろう。改めて調べてみると、

外界の刺激や印象を感じ取ることができる働き。

デジタル大辞泉より)

 外界のことを感じ取るということならば、ほかのことが気になってきれいな夕日が楽しめないことも感受性といえないだろうか。

ひょっとしたら「空気を読む」ことも感受性が豊かということになるんじゃないだろうか。
だって、「外界」のことなんだから。

女子会なんかで、話が盛り上がっていつまでもきゃっきゃとおしゃべりしていることがある。
お店はもう閉店しようとしているのに、それにぜんぜん気づかない。そういうとき、わたしは話なんかそっちのけで気が気じゃない。お店のひとだって、できれば「閉店ですから出てってください」といった内容のことを、なるべくなら言いたくないだろう。
閉店時間じゃなかったとしても、平気で4時間も5時間も同じ店にい続ける女子会は珍しくない。いくらなんでも5時間とか店にいすぎじゃないか。それに、もう2時間もなにも注文してないし。ちょっと場所を変えたほうがいいんじゃないかと、わたしは気になってしかたがない。
でも、声と気が小さいわたしは、盛り上がっているなかで「そろそろ場所変えない?」のひとことを言うタイミングがなかなかつかめないのだ。

 

だから、わたしなんぞは、絶対に芸術家になれないタイプだ。
描き上げた絵が気に入らないからと、絵の具で大きなバッテンを書いてしまう画家。
できあがった器が気に入らないからと、その場でぐしゃっとつぶしてしまう陶芸家。
せっかくとった出汁を、こんな味じゃダメだ! とザバーッと流してしまう料理人。

ああ、もったいない。
せっかく描いたのに。せっかくつくったのに。材料費がぁぁ……。

こんなことを思ってしまう貧乏くさい人間は、芸術家には向かない。

感受性は、形は違えどだれにでもあると思っているが、きれいな風景に感動するといったたぐいの感受性があるひとは、集中力がものすごくあるのだと思う。
ほかのことなんか気にせず没頭できるから、熱のこもった、とでも言えばいいのか、狂気に近いものを生み出せるのだと思う。
わたしのように飛行機とか待ち人といった周囲のいろんなことを気にしてそわそわして生きていると、狂気の域には入れない。

「みんなが泣いた」という謳い文句の本を読んでも、「涙せずには見られない」と評判の映画を見ても、わたしがひとつぶの涙もこぼさないのは、集中力がないのと、見るポイントがあきらかにズレているからだ。

作者の描写が稚拙すぎて腹を立て、内容は感動物語でもそこに入り込めない。
数十年ぶりに観たアニメのCG技術の進歩に気を取られて、ストーリーがぜんぜん頭に入ってこない。
あーあ、今日の夜ご飯、なに食べようかな。

で、終わった後には、「読んだ」「観た」という事実と、「泣けなかったわたしはばかなんだろうか」という感想しか残っていない。そんなことばかりだ。

きれいな風景に感動する種類のひとは、感動ポイントがちゃんとわかっているのだと思う。そして、そこのポイントに自分をぐーっと入り込ませていき、疑似体験をする。だから感動してぼろぼろと泣く(泣くばかりが感動じゃないですけど)。

あ、でもわたしにも一つだけ芸術家的要素があった。
文章を書くための場所を厳選すること。家じゃダメ、集中できないところもダメだから、そういう場所を求めてさまよう。ちょっとクリエイティブなひとっぽくてかっこいい。

それに、何時間もかけて書き上げた文章がどうしてもしっくりこなければ、即ゴミ箱に移動させることもできる。いったん書き上げたものをちまちま直すことをしてみるものの、結局つぎはぎだらけのちぐはぐなものになり、全体として勢いのないものになることがわかったからだ。
無駄になるのはわたしの時間とパソコンが使った電力だけだ。たいしたことない。……のかな?